熟成肉って何がいいの?
熟成肉って何がいいの?と聞かれることがあります。一般的には、ナッツの香りが〜、とか旨みが⚪︎倍とか、驚くほど柔らかくなるという売り文句が書いてあります。
確かにナッツの香り漂って、旨みが増しているのはそうなのですが、熟成の本質では無い気がします。(私自身、このような売り文句を使ってきたのですが)
話は戻りますが、熟成肉は何がいいのかと聞かれた時、一言では語れない複雑性がいいのだと答えようと思います。ピンとこないと思いますが、解説します。
例えば熟成をすれば一部のタンパク質はグルタミン酸等の旨み系統のアミノ酸に変わります。ただ、それはほんの一部に過ぎません。酵素により分解されたタンパク質のほとんどは、ペプチドより長い鎖に止まります。この作用により旨味というよりかは、複雑性に富んだ肉が生まれます。
ナッツの香りもそうです。お客様にはローストアーモンドという方もいれば、パルミジャーノレジャーノという方も、ブルーチーズという方もおります。熟成肉のナッツの香りというのは、熟成初期に大量に生えるケカビが醸し出している香りですが、正直このケカビは暴力的なまでのナッツの香りです。熟成中期にはアオカビが繁殖して、コクっとしたアーモンド様の香りを出します。写真の熟成豚はアオカビが多いのでどちらかというとアーモンドやチーズ寄りの香りが強いです。生える菌の比によって、香りも変わりますし、複雑みが増し、美味しく感じるのだと思います。
※ケカビ、アオカビが混在している熟成肉
脂質も同様に、ドライな環境においておけば、カビはあまり生えませんが、塩を振ってちょっとウェットな環境にしてあげればアオカビが繁殖して、チーズ様の香りを出します。その微生物たちは、脂質も分解するため、これも複雑みが増すわけです。
これを誰にでもわかるように伝えるのは至難の業ですが、しっくりくる伝え方をしていかなければならないなと、最近思います。