代表紹介

つむぐの想い

つむぐは、長期熟成にこだわった熟成肉ブランドです。私が事業をするうえで一番大事にしていることは、嘘偽りない「本物」を創るということです。食品業界には、少なからず闇が存在します。現状を変えるとまではいきませんが、少なくとも、本物をお届けすることはできます。この飽食の時代に、薄れてしまった食への感謝や団らんの時間。私は熟成肉を通して「何気ない食事の時間」を「一生残る大切な時」にしたいと思っています。そして、皆さんとその一瞬一瞬をつむいでいきたいです。

【経歴】
2017年に秋田大学大学院 生命科学専攻修士号取得。2019年2月より食品メーカーにてカビの研究と新商品開発を行う。2020年より独立し、熟成肉有名店にて修行を積む。ミシュラン1つ星店「LA TRACE」 をはじめとして様々な有名飲食店から採用を受ける。

~カッコいい営業マンへの憧れと希望~

Q. なぜ最初は発酵食品会社の営業マンになったのか。

私は、岩手県宮古市で生まれ、海と自然豊かな土地で育ちました。そんな環境もあり、小学生の時にキノコに興味を持ち始めます。図鑑を誕生日に買ってもらっては、その本に釘付けになりました。その頃から、菌を含めた生き物全般が好きになっていました。高校生の頃には、漠然と「生物と関わる仕事がしたいな」と思っていました。

秋田大学生命化学科に進学を決めた矢先、東北大震災が起きました。友人もなくし、周りが涙していた日々を忘れることができません。この出来事をきっかけに、「後悔しない人生を生きたい」と思うようになりました。

大学院まで進み、自分のやりたいことがわからない中、必死で就職活動をしていました。その中で「営業マンがとてもカッコいいな」と憧れを抱き、生物系の特色を生かせる発酵食品メーカーの営業としてキャリアをスタートさせました。「世の中を健康にしたい」「会社で活躍したい」と希望に満ちていました。

~営業マンでの挫折と研究職での再スタート~

Q. なぜ営業マンからカビの研究職に移ったのか。

息をまいて仕事をやっていたところ、すぐに壁が現れました。私は、人と話すのが全くと言っていいほど得意では無かったのです。何か質問されたら、頭に思い浮かんでいる言葉がすぐに出てこないという「ドモリ」もありました。そして、生意気でした。当たり前のように仕事はうまくいかず、毎日怒られ、毎朝吐き気がするほど精神的に参っていました。

その中でも「なんとか結果を出したい」と思っていた私は、当時、誰も営業をしていなかった給食業界にアタックし、後輩の代まで引き継いで、何とか取引をしていただけるようになりました。

ただ、あまりにも自分の理想と現実にギャップを感じていた私は「活躍できる場は他にあるはずだ」と思い、研究職への異動を打診し、研究職のキャリアをスタートさせました。研究職では、苦しい時も多々ありましたが、とても充実した生活を送っていました。しかし、好きなように商品を作り、届けられられないという日々に悶々としていました。

~2度目の挫折から転職~

Q. 一回目の起業では何をしたのですか。

研究職として働いていた時に転機が訪れます。クラフトビールで起業している人にお会いしたことです。万年サラリーマンとして働こうと思っていた私は、こんな働き方もあるんだなあと感心していました。そして、起業するのはとてもカッコいいなと思うようになり、起業への道を模索し始めます。

当時流行っていた、プログラミングやHP作製に興味を持ち、ひとまずはこれで起業して、お金を稼いだら好きなことをやろうと思い、思い切って独立。知り合いから仕事を貰い、やり始めました。

しかし、お金が支払われない。3ヵ月も未納金もまま、貯金ばかりがなくなる日々を送っていました。「どうしよう」と毎日頭を悩ませる日々。結局、その事業はとん挫し、就職活動をはじめました。しかし「この履歴書、絶望的だよ」ともいわれ、何社も落ちました。

何とか、予防医療のベンチャー企業に内定を貰い働き始めました。すっかり自信を無くしてしまっていた私にとって、本当に嬉しい出来事でした。

~人との出会いと転機~

Q. 熟成肉とはどのように出会ったのか。

ベンチャー企業で働く最中、クラフトビールの起業家の方から、ビールが出来たから飲んで欲しいと連絡が来ました。そのビールを飲んだ瞬間、衝撃が走りました。「う、うまい」。こんなにも感動したビールを飲んだのは初めてでした。

この時に目覚めました。

「僕も、感動できる食を作りたい」

思い立ったら吉日、すぐに会社を辞め、作る商品を模索し始めました。私に出来ることは、「カビのお世話」「食品管理」。当時、お肉にかなりのお金を使っていたので、「熟成肉だ!」とピンときました。

そこからは、全国の熟成肉を取り寄せては食べ、一番おいしいところに修行を頼もうと思っていました。熟成肉の中でもひときわ異彩を放っていた、今の師匠のお店に、修行を頼み込みに行きました。

~もう諦めない、熟成肉に決めた~

Q. 熟成肉を販売するまではどのようなことがあったのか。

修行を頼み込みに行ったものの、「無謀ですね」と一蹴されました。「絶望」でした。もう引き返せないと思っていた私は、何度もアタックをして、ようやく受け入れていただけました。その間、約4ヵ月。屋台をやって何とか食いつなぎました。

教えていただけるようになったものの、肉はすぐには捌かせてもらえない。どこかで肉を捌く勉強をしようと、焼肉卸のアルバイトを始めました。そこでは、真空パック詰めや、ラップ掛け、内臓処理をやり続けました。「誰よりも早く仕事をやろう」と心がけていたので、半年たった後、ようやく認めていただきました。

そこからは早かったです。そこの誰よりも、肉を勉強しているという自負はあったので、すぐに捌きを覚えました。並行して熟成肉も満足のいく仕上がりになり、クラウドファンディングにて販売を開始しました。

Q. 挑戦したいことはあるか。

おかげさまで、熟成肉をご好評いただき、「感動した」「肉の概念が変わった」等のお声をいただけるようになりました。また、飲食店でも、少しずつ採用いただけるようになりました。

最初は「野獣」というブランド名でしたが、「つむぐ」という名前に変更しました。「野獣」の時は、食に対する野性的なまでの喜びをお届けしたいという思いで立ち上げたのですが、店舗を持つまでにやりたいことが増えたので、改名いたしました。

本能的な喜びをお届けすることはそのままに、生産者さんや関係者さんの想い繋いでいきたい、皆さんの食事が思い出に残る1ページとしてつむいでいきたい、思っています。

この理由から、つむぐに変更いたしました。

直近で挑戦したいことは、ジビエの熟成です。獣害駆除として捕まえられたシカやイノシシは、多くが廃棄されています。熟成を用いることで、有用に活用できるジビエを多くしていきたいと思っています。

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